テクノロジーの急速な普及(太陽光発電)
20世紀は石油をはじめとする化石燃料の利用が進み、エネルギー消費が拡大し、大量輸送が可能となり、石油化学、鉄鋼、繊維、製紙などさまざまな工業が発達しました。その一方で、化石燃料の使用に伴う環境汚染が深刻化し、生活環境が悪化しました。身近な環境汚染に対して個別に対策が施され、問題が解決したかに見えましたが、近年、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが、気候変動を伴いながら、地球全体の生態系に影響を及ぼすほども増大し、今や地球の生態系が危機的な状況に陥っています。
一方、地球温暖化の問題を解決すべく、いくつかのテクノロジーが開発され、急速に普及しつつあります。その中で、太陽光発電を取り上げてみます。
太陽光発電は20世紀半ばには発明されていましたが、当時(1956年)は1wを発電するのに1865ドルを要しており、価格が高すぎて実質利用不可能でした。
その後、技術の蓄積、価格の低下、量産化、マーケットの拡大、新規参入による競争、さらなる技術の蓄積、さらなる価格の低下というような好循環が生まれました。このような技術の学習効果により、太陽光発電の価格は、劇的に低下し、同時に需要が拡大し、生産量は指数関数的に増加しました。
1976年には1wが106ドルへ低下
2019年には1wが0.38ドルへ低下
この価格低下と生産の拡大を示すグラフがOur World in Dataに記載されていますのでご覧ください。
https://ourworldindata.org/cheap-renewables-growth
さらに、最近10年間の価格低下の様子を、発電の種類別に比較したグラフがあります。これをみると、10年前(2009年)は太陽光発電に比べて石炭発電や原子力発電、ガス発電がはるかに低価格でした。ところが、この10年の間で太陽光発電の価格が劇的に下がったことで、2019年では太陽光発電が最も低価格となっています。
石炭による発電は、燃料に石炭を使用するので、いかに効率化を進めたとしても、石炭の価格よりも下げることはできません。石炭を地中から掘り出して運搬するためのコストを要します。太陽光発電の場合は、一度設置すれば、燃料費が不要なので、その後はほとんどコストを要しません。このグラフをみると、石炭発電のコストはほとんど下がっていません。おそらく今後も大きく下がることはないでしょう。太陽光発電に関しては、量産化の効果により、今後も低下する可能性があります。価格が下がれば需要はさらに増加します。太陽光発電は現在急拡大していますが、この勢いは当分続くと考えています。エネルギーの脱炭素が達成される時期は、意外と早く訪れるのかもしれません。